2011-10-16

『自分が認められる自分でいたい』 いま、世界を変えている日本人 ベトナム 白井尋さん⑤

Q今後の事について

K「フーンライの事業はずっとご自身で続けていかれるんですか?」

「自分は自分自身の力でやっているというよりも、
やらせて頂いていると感じているんですね。
だから、もし大きな壁が出てきたり、
例えば、ここに入りたい子がいなくなったりね。
そうなったら「お前はもうここでやらなくていい」ってサインなのかな?
って考えますね。」

K「なるほど。」

「けど、そういう子どもたちとの出逢いが続く限りはまだ続けていくのかな。
本当はこういうレストランないほうが良いわけですから。
なので絶対続けていくとは決めていないですね。それに純粋にレストランとして、
喜んでくれるお客さんがいる限りはレストランとして続けていくべきなのかな?
とも考えられますしね。」

K「つまり、始めた時と同じなんですね。決めずに自然な流れにまかせる。」

「そうですね。ただどちらにしろ、これから自分がやるべき事って
何なのかなっていうのには、アンテナを張っていますね。」

K「尋さんのそういう自然な姿って良いですよね。
なんか聞いてて疲れないっていうか(笑)。
必ずしも形ありきで進んでいく必要は無いんでしょうね。」

「形をつくりたがるとか、ゴールを創りたがるっていうのは
場合によっては素晴らしいことだけど、それが絶対では無いってことですね。
ただし自然に進んでいく上で大事なことは
常に自分を振り返る余裕を持つってことですよね。」

K「なるほど。」

「それが無いと自然に流れていくことは出来ないんですよね。
流れていく自分自身が自分じゃなくなっちゃうから。
自分がそういう余裕が持ち続けて居られるのは
ベトナムに居るからなのかなとも思っていますね。
日本だと、それは難しいのかもしれない。」

K「言い換えると、ゴールを設定するより、自分を掘り下げる方が先だと
言うことですよね。そう考えると日本の教育は逆なのかもしれないですね。
外から付け加えるものは何か?から決めつけていくというかね。」

「『枠に入れ!』っていう感じですね。」

K「そうじゃなくて、自分は何なのか?から始まる学び方もありますよね。」

「夢とか目標は何ですか?と伺うところなんですが、
尋さんは設定されないんですもんね(笑)。」

「唯一言える事は、後悔したくないんですよね。
常に納得できる自分でいたいなって思ってますね。
あまりストイックな意味ではなくてね。」

K「なるほど」

「その時その時に、自分が自分自身でいること、それが目標ですね。
または自分が認められる自分でいたいなと。」

K「深い!」

「北の国からの五郎さんみたいに税金払えなくなるのは極端だけど、
ああいうスタイル、概念も忘れないで生きていければ
踏み外さないで生きて行けるんじゃないかなと思うんですよね。
そこには大きな目標とかっていらないんですよね。」

K「ふと思ったんですけど、
僕ら日本人って基本農耕民族じゃないですか?
そして農耕民族って基本的に大きな目標っていらないんですよね。」

「その通りですね。むしろ日本人って淡々と、きちんとできることに
魅力を感じる美意識って持っている。目立たなくても自分を見失わないで、
日々『これだ!』と思えるものを続けて一日を終われる。本当はそれが一番良い。」


K「結果、それってスゴイことですしね。
積み重なっていって、年輪みたいになるわけですよね。」

「そう。去年とほとんどいっしょなんですよね。
けど、ちょっとだけ違う。一枚外側なんです。」

K「それが百年とか二百年経つうちに、大木になっている。
それが日本人の持っている本来の姿かもしれませんね。」

「ちょっとかもしれないけど、確実に前進している。
というものだよね。日本の職人さんは皆そういう心をもっているよね。
そういう職人さんは満足した人生をおくれると思うんだよね。」


Q最後に読者へ何かメッセージを

「やっぱり『現代日本の常識には騙されるな』ってことじゃないですか(笑)。
具体的にはマスコミや世論とかに流されないってことですよね。
疑問を持って否定することから、自分のなかで再構築する。
そういう姿勢を持つことが大切でしょうね。」


K「(本物を見る感性がある)日本の若者に向けた
メッセージも頂きたいのですが?」


「学校の先生の事を初めから信用するなってことですね。
要は一回疑ってみろってことですね。 
そして自分できちんと考えてみて、その上で結果として信用するのはいいんですよ。
ただ、まずはいろんなことを疑えってことですね。」


K「それって日本にいる大人はなかなか言えないんですよね。
なので、とても重要な示唆だと思います。インタビューは以上になります。
大変有意義なお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。」


(インタビューは2011年9月に実施)
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インタビューを終えて(感想)


白井さんとのお話では何よりも「自然体でいることの大切さ」が強く印象に残っています。

私は今まで「社会起業家」や「途上国支援」といったフレーズにはいつも
「決意」や「覚悟」といったものがセットになっていると思っていました。

しかし、必ずしもそんなことは無い。
ということを白井さんの背中から学ぶことができました。

白井さんは「自分が自分であることが大切」だとおっしゃいます。
そして自然体でいるからこそ、しっかりと自分の道を歩んでいけるのです。
ともするとこれは簡単なことのように聞こえますが、しかし、実際は難しいものですね。

例えば事業の中でも「ビジネスとしては逆方向」とわかっている選択を、
敢えてする場合も、自分自身が自然体でいなければ出来ないことでは無いでしょうか。
まして、社会や他人からの評価や批判そういったものばかりを気にしていたら、
信念を貫くことは難しいのではないでしょうか?
そういった意味でも「自分自身で考えること」や「自分自身と向き合う時間」が
大切なのだと改めて実感させられました。

ですので、日本の若い皆さんには白井さんのおっしゃる通り「常識を疑ってみる」ことを是非実践して頂きたいと感じています。

それは「自分自身で考えること」に他なりません。そしてその先にはきっと自然体のあなた自身が見つかるのではないでしょうか?

最後に白井さん、そして奥様には
インタビューだけでなくホーチミン滞在中はプライベートでも大変お世話になりました。

お二人に出逢えたことが、
私達にとって大きな財産となりました。

本当に有難うございました。

以上

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