2012-11-19

『いま、世界を変えている日本人』 第4弾 エクマットラ 渡辺大樹さん③

・・・つづき

(高校時代の部活動で得たもの)

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K.「その~大樹さんは昔から前向きでした?(笑)なんというかポジティブ思考だったんですか?」

「まぁ、多分お調子者だったとは思いますね(笑)」

K.「お調子者だったんですね。」


「小さいころから崖のそばとかに行って、落ちるギリギリのところで遊んでみたり、、」

K.「そういうことやっちゃうんですね。」


「結局、崖から落ちかけてあれは完全に死んでましたね。九死に一生を得たっていうような事もあったり。江の島だったんですけど。」

K.「江の島の崖から落ちかけたんですか(笑)?」


「それも奇跡なんですけど、落ちかけてる瞬間に崖に生えている雑草をパシーン!って掴まえて」

K.「掴まえた!」

「それで登れたんですよ。でも、後でみたら崖肌に雑草はそこにしか生えてないんですよ。ピンポイント!」

K.「あはは!あっぶね~(笑)」

「それが小学校一年か、二年ぐらいの時ですね。そういうお調子ものだったんですよ。」

K.「ご両親はヒヤヒヤものですね。」

「その時の崖から落ちかけた恐さよりもその後親父に怒られた恐さの方が怖かったですね(笑)」


K.「面白い!じゃぁ、小さいことからポジティブなエネルギーは常にお持ちだったんですね?」

「たしかに元々お調子者だったんですけど、実はターニングポイントは高校のときで。」


K.「ほう」

「もうね、あれが無かったらタイで衝撃受けてもバングラ来なかったと思うし、今もこういう風に考えられなかったと思うし」

K.「それは一体どんな経験なんですか?」

「私、小学校、中学校と野球部で、小学校のときとか弱小野球部に入ったので私もへたくそだったんですけど、周りはもっと下手だからまぁ、ちやほやされていきなりキャッチャーで四番だったんです。」

K.「なるほど」

「中学に入ったら同好会しかなかったんですよ。だから楽しくワイワイやってる感じで、二年になったときに同好会から部に昇格したら三年生もすぐにいなくなって、だから僕ずっと上だったんですよ。下積み時代が無かった。」

K.「なるほど」

「それでいきなり高校でむっちゃ旧体質の体育会系みたいな野球部に入って」


K.「うん」


「毎日夜12時まで説教されて」

 

K.「まじすか~」

「で、また朝五時から朝連みたいな。なので体力的にもそうだし、精神的にも追い込まれてたんですよね。」

 

K.「しかも、それが人生初の経験。」

「初の経験ですね。そうしたら、どんどん走れば走るほどタイムが落ちて行って。」

K.「ほう」

「入部して最初に1500mを測った時に流して走ったんですよ。最初はまだ仮入部くらいで指導も軽い感じだったんで。」

K.「はい」

「それでタイムが6分30秒とかで結構それも遅いんですよね。普通5分とか切ったりするじゃないですか。その時の6分34秒っていう一年生の時に流して走った数字がそれから二年間の最高タイムで、、」

K「え?」

「それからはずっと走れば走るほどタイムが落ちていって、、」


K.「そんなことあるんですか。」

「走れば走るほど辛くなっていって毎日もう吐きながら練習してて。」


K.「え~!!」

「生きるか死ぬかの狭間だったんです毎日。もう超辛くて。」


K.「そりゃ、キツイっすね。」

「で、最終的には1500mで9分近くかかったんですよ。」


K.「それはもう、、」

「歩いたのと何にも変わんないんですよ。」

K.「ですね。あららら~」

「なので、本当にどうしようもなくてでも毎日毎日生きてるのが辛いというか一限目はまだ『あぁ、まだ時間がある』って思いながら寝て。普通先生も寝てる生徒はおこすんですけど、私はもう鬼気迫る寝方をしてるから(笑)先生も私だけは起さないんですよ。」


K.「なるほど」

「『こいつ起したらまずいな』っていうのが、感じられたみたいで。」

K.「ホントにやばいと」

「少しでも体力回復しなきゃと思って寝て。早弁して。寝て。グランド整備して、寝て。っていうのをやって『あぁ六時間目だ。今日生きて帰れるかな~』って思って。」

K.「ほぁ~」

「周りはね、みんな普通に練習してるんですけど全然ついていけなくて、ゲーゲー吐きながら練習してやっと練習が終わったと思ったら『今日はタイヤ引きやるよ!』ってタイヤ引きながら100m10本とかやっててその度にゲーゲー吐いて。」

K.「はい」

「それで家に帰って『いや~なんとか一日生き残った。』と思って次の日また朝連に行くって感じで。どんどん、どんどん辛くなっていって。」

K.「はい」

「精神的にも体力的にも追い込まれて」
 


K.「そうでしょうね」

「それまで結構、楽観的だった自分がもう『自殺』っていうことも頭によぎっちゃうくらいの感じだったんですよ。」

K.「あぁ」

「しかも理由が分かんないんですよ。なんでこんなに体力が落ちていくのかわかんないし、なんでこんなに足が遅くなっていくかもわかんない」



K.「そうですね。」

「これ靴のせいなんじゃないか?と思って靴を買いに行って、その時自分のもっていたおカネをはたいてリーボックの良い靴を買ってみたんですけどさらにタイム落ちてて(笑)」

K.「あら」

「いろんなものにすがってたんです。」

K.「うん」

「なんとか。なんとかって思ってたんですけど、もうどうしようもなくて。自分のタイムがキレないとボールもバットも触らせてもらえない時期もあって、でも走れば走るほどタイムはさらに落ちて。自己嫌悪ですよね。」

K.「なるほど」

「でも、手を抜いてるつもりは全くないんですよ。誰よりも努力してる。監督もそれはわかってるんです。」


K.「はい」


「だから怒んないんですよ。怒れないんです。」


K.「なるほど」

 

「私がすっごい本気でやってるけど、でもタイムが落ちてくっていう。それがふざけてやってたらぶん殴られるんですけど。」


K.「ですね」


「っていうのが二年間続いて、二年の最後らへんになんか分かんないんですけど痛いんですよ。この辺が(胸のあたりを指しながら)」


K.「全体的に痛いんですね。」

「そう、最初は心臓かな?って思って。結構痛いから、練習が休みの日に医者に行ってみてもらって、そこで心電図とったり、レントゲン取ったりしたけど特に異常なくて。『大丈夫だよ』って言われてやっぱり気のせいなのかな?と思いながら帰ろうとしたんだけど、その時先生が『ちょっと待って渡辺くん』って呼びとめて『多分大丈夫だと思うんだけど、念のため血をとってみようか?』って言われて。」


K.「うん」


「私、本当はその時帰ってたんですよ。で、帰ったら死んでたんですけど。」


K.「え?」

「とりあえず、その日血を取って結果は明日になればわかるからって、その日は帰ったんですよ。」

K.「はい。」

 

「で次の日野球部が練習してるときに、校内放送で『野球部の渡辺くん、至急職員室来なさい』って言われて。で職員室いったら受話器を渡されて『医者の山口です。渡辺君いますぐに練習を切り上げて、病院に来なさい。でも自転車も使わず、走ったりもせず、タクシーかバスで来なさい。もしバスを使うなら、バス停までゆっくり歩いて行きなさい。
でもすぐに来なさい!』って。」

K.「ほう?」

「おかしな医者なだな~っと思ってだって自転車で行ったら15分、バスで行ったら50分かかるんですよ。」

K.「返ってね。」

「急いで来いとか言いながら、『バス使え』とか意味がわかんないなと思いながら。でもスゴイ鬼気迫る感じだったから、その時点では親に何かあったのかな?とか思ってたんですよ。昨日血液採ったことあんまり覚えてなくて(笑)」

K.「なるほど」

「で、病院に行ったら、先生がスゴイ神妙な顔で
『渡辺君、きみ、痔がある?』って言われて
『痔?いや~無いですよ。』
『いや~君ぐらいの年齢になると恥ずかしいかもしれないからあれだけど、もしあるなら言って』」

K.「ほう」

「『いや本当に無いですよ。なんでですか?』って聞いたら
 『君ね、致死量って知ってる?』
 『はい、知ってます』
 『血液の致死量とかわかるよね?』
 『なんか聞いたことはあります。』
 『君は血液が普通の人の三分の一しかない。』」

K.「へ?」

「『え?』
 『三分の一無くなったら、死ぬところを
  君は三分の二、無くなってる』って、
 『赤血球のヘモグロビン量がガクンと下がってて
  だから君の血液は酸素を運ぶ機能を果たして無い。』って
 『酸素はあるけど、運ぶトラックが無い』っていうのを
 図を書いて説明してくれて。」


K.「はぁ~、そんなことあるんですね。」

「『普通だと死んでるし、私も見たこと無い。』と
 『たまに女性だと生理が続いたりして、こういう数値になることはあり得るけど、男性だと痔とかでずっと出血をしていない限りまず無い。』」

K.「うん」

「『おそらくだろうけど、君の場合はゆっくり減り続けたから、今も生きてるんだろうけど、、とりあえず絶対安静です。』って、ちょっと動いても心不全起こすかもしれないから。」

 

K.「それでバス。」

「とりあえず原因を探しましょう、ということで、それから一週間学校を休んでいろいろ検査して、最後に胃カメラを飲んだら胃にこんな(親指と人差し指で輪)穴が空いてたんすよ。」


K.「はぁ~、そっからずっと出てたんだ。」

「そう。そっからずっと血が出てた。二年間。」

K.「恐ぇ~(笑)」

「そういえば二年前からずっとタイムが落ちてどんどん辛くなってましたとか言ったら『おそらく二年前に胃潰瘍ができて、そこからずっと漏れてたんだね。』って」


K.「それずっと我慢してたんですか?吐いてるのもそれが原因ですよね。」

 

「おそらく。で、それから学校には通い出したんですけど、二か月間は野球部の練習も休んでまず胃を直してから、治療を続けて二カ月後にヘモグロビンが普通の人と同じ三倍に戻ったんですよ。」

K.「良かった。」

 

「そこで野球部の練習に参加できることになって、久しぶりに練習行ったんすよ。そしたらいきなり6キロ走を走ることになって、『帰ってきたそうそう、6キロかよ』と」

K.「そうでしょう。」

「いままでダントツのビリだったんですよ。なので『またビリで辛いだろうな~』と思ってたんです。」

K.「よくやりましたね~。」

「で走ったら、『あれ?あれれ?なんで、お前らそんなに手ぇ抜いて走ってんの?』とか言って、ブワ―って走ったらダントツ一位になっちゃって(笑)」

K.「その復帰後最初の練習で?」

「そう最初の練習で。ダントツ一位でマンガみたいだったんですけど(笑)」

K.「ですね~」

「しかも、6キロ走り終わってから全く息が上がらないんですよ。それからどんな練習しても何にも息があがらなくて。もうね、楽しくてしょうがないんですよ(笑)」

K.「なるほど~」

「今まで タイヤ引き、坂道ダッシュなにやっても吐いてたのが、楽でしょうがなくて、それから世界の色が変わって。『うわっ、楽しい~』と思っていままで生き残るので精いっぱいだったのがいろんな事考えられるようになって、どんどん上手くなって。」

 

K.「そうか」

「後日そのことを医者に言ったら『そうなると思ってたよ。』って『君はいままでの二年間超高山トレーニングをしてたんだよ』って」
 

「それからの練習ではどんどん上手くなっていって、それから四ヶ月くらい後に甲子園の神奈川県予選があって、その時は四回戦まで行けたんですけど、その試合中も自分が伸びているのが感じられたんですよ。」

K.「ほう」

「なので、あと一カ月早く復帰していれば五回戦にも、その先の準決勝にもいけたかもしれない。という想いをもちながらも結果を残せなかった。」

K.「うん。」

「高校に入ってからの二年間の地獄と、半年間の天国とそのことを形に残せなかった。なので、何か形に残したいって思って、その後二カ月後に予定されてたマラソン大会に照準を絞って、校内450人一斉に走る大会で、そこで絶対に20位以内に入って賞状をもらおうって決めて。」

K.「トップ20か。」

「当然陸上部や、そのほかの部活動の現役生も走るので、三年生が入賞するのは難しいんですよ。でも、私は絶対に賞状をもらうって決めたんで、受験勉強もせずに、走って、走りまくって当日はそれまでの自分の全てをこめて走ったんです。そしたら最後ギリギリで20位に入ることが出来て、それで賞状をもらえたんですよ。」

K.「へぇ~ギリギリで。」

「ギリギリで。それで賞状もらえたんですよ。」

K.「賞状をもらえるのが、20位までなんですね。」

「そうです。ほんと全てを賭けて走ったら、そこで20位まで入れて」


K.「しかもそれが目標だったんですもんね?」

「そこで、校長先生に賞状をもらった時に一つ形にできたんだなって思ったのと、同時にその時、空を見上げて思ったんですけど、なんていうか突き抜けちゃったんですよね。」


K.「突き抜けた?」

「今後、人生辛いことも、苦しいこともたくさんあるだろうけど、まずこの高校の二年間ほど辛いことは絶対起こらないなって思ったんですよ。」

 

K.「この先ね。」

「その辛い、人生で一番つらい出来事を乗り越えたからオレこの先どんなことでも出来るなって思えて。その時になんか、ポーンっと突き抜けちゃったんですよ。」

K.「あぁ、その感覚わかります。」

 

「その時に自分っていう人間を凄く認められて俺は大丈夫なんだ』って思って、そこで変わりましたね。」

K.「なるほど」

「その日の事は今でも凄く覚えていて、なんか自分の中の世界の色がガラッと変わりましたね。」


K.「へぇ~面白い。でも、よくその地獄の二年間で野球部を辞めませんでしたね?普通胃潰瘍になったら、その時点で駄目ですよ。運動なんて出来ないでしょう。大樹さんは、我慢強い人なんですか?」

「痛いというよりは、麻痺しててよくわからないんですよ。ただ疲れていく。それに、負けたくないっていう気持ちが強かったんですよ。野球部全員に。だから野球部を辞めるっていう選択肢はなかったんです。けど、人生はとめかけてたんですけどね(笑)」

K.「ほんとですね(笑)良くここまで生き抜いて下さいました。その経験が、現在の大樹さんに繋がりますよね。」

「めちゃくちゃ繋がりますよ。」



④につづく
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