・・・つづき
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Q、「日本が30年後、世界から憧れられる国になるには何が必要か?」
K.(上記)僕のテーマですが、この質問に大樹さんはどうお答えになりますか?
「まずは、日本人がちゃんと自分の国のことを学ぶこと。自分の国のことを知って、自分たちの国の誇るべきことをちゃんと教える。ちゃんと教わる。」
K.「そうですね。」
「それが本当に大切です。いまの教育で足りなさすぎますよね。戦後からの教育の流れがずっと根付いていてね。」
K.「そうですね。」
「どっかで罪悪感を感じさせられるような教育を受けてきているので。」
K.「おっしゃる通りですね。」
「もちろん、歴史的にね、過ちを認めることは必要なんですけど、だからと言って本当に素晴らしい文化、武士道とか、阿吽の呼吸といった、そういう自分たちの素晴らしく誇れるものを学んで。みんながそれを答えられる。誇るべきことを答えられる人間をないと、
それは絶対に憧れられないですよね。」
K.「そのとおりですね。」
「残念ながら、いまバングラデッシュ人と話をしていて、『日本人って意外とたいしたことないよね?』って言われちゃうんですよ。もちろん英語の問題もあるとは思うんですけど、語る内容が薄っぺらいとか、日本のこと聞いても、日本のことを知らないとか言われるんですよ。それは話にならないですよね。」
K.「論外ですね。」
「やっぱりそこで、相手の国のよさもわかるけれども、自分の国のよさも伝えられる、ちゃんと引き出しをもった人間に、やっぱり日本人はなる必要があると思いますね。なので、それに関する教育は本当に必要だなと思いますね。」
K.「おっしゃる通りですね。」
「あとは、日本人が自分の舞台に生きがいを感じて、やりがいを感じて、目をキラキラさせて生きていたら、それってとても魅力的な国だと思うんですよ。」
K.「そう思います。」
「いま日本人って悲観する人が多い。何かを人と比べて、全然出来ていないとか。人のいい部分を取り上げた番組、プロジェクトXとか、そういう番組を見たときにそれがネガティブに働くことがある。」
K.「あの人達と比べて、なんてダメな自分ってことですね。」
「それをもっといいエネルギーに変えればいいのに。あと、他の国もそうかもしれないけれど、日本人って不幸なニュースとか大好きですよね!?」
K.「不幸なニュース、大好きなんですよね。」
「だから、メディアもそれを取り上げるし。多分、凶悪犯罪って昔からあんまり増えていないんですよ。」
K.「だと思います、、」
「ただ、メディアが取り上げているだけで、それはニーズがあるから。いい話を聞きたくない。人の不幸を聞いて、人のアラを探して、安心したい。もう社会としてのダイナミックさを失っているんですよね。」
K.「なんか屈折してますよね。」
「ブログだったり、ツイッターだったり、人の呟いた一言を取り上げて、揚げ足をとってね。」
K.「そう。揚げ足をとるっていう風潮ね。」
「それは国として終わっちゃいますよね。」
K.「政治から、芸能人のスキャンダル、ツイッターの一言、あらゆることに関してそうですよね。そんなことどうでもいいじゃねぇかって事に食いつく。」
「それはやっぱり、みんな自分がやっていることに自信がないからだと思うんですよ。自分がやっていることに生きがいを感じられない。」
K.「うん。」
「俺は別に靴磨きやっててもいいと思うんですよ。この仕事大好きって思ってね。『今日もよく靴を磨けた!!』て思える人はね、凄く素敵だと思うんです。」
K.「思います。」
「何が大事かというと、自分の生きていること、生き様、舞台、自分が選んできた道、それにちゃんと誇りを感じて、これが自分の天職なんだって!もう思いこむこと、テンションのコントロールとも似ているんですけど、そうやって思い込むことって大事だと思うんですよ。」
K.「なるほど。」
「講演会とかで、学生とかによくいうのが、『私、いまこんなことしていますけど、実はボブスレーやってたら世界チャンピオンだったんですよ。』って言ったらみんな『えぇ!』って驚くんです。」
K.「(笑)」
「もう一個ね。『カーリングやってたら金メダル三つぐらいとってたんですよ。』って言ったら、『えぇ?そうなんですか?』って、みんなね驚いた顔するから、『うん、だってやったことないんだもん』ってね。」
K.「(笑)」
「やったことないから、もしかしたら、ボブスレーの超スーパー天性の才能をもっていたかもしれないし、カーリングやってたらあの微妙な氷の削り方がわかったのかもしれない。って考えてたらキリ無いですよね?」
K.「うん。そうか。」
「だって、スポーツだけで何千ってあって、職業だったら何万ってあって、
それのどれが自分に一番あってるかなんて探すだけで自分の人生、何回やり直しても足りないですよね。」
K.「たしかに。」
「だから、『天職』って見つかりっこないんですよ。『天職』ってのは見つけるもんじゃなくて、自分がやっていることを『天職』だって思い込むこと。どれだけの強い思いで思い込めるか?それが天職だと思うんですよ。」
K.「うん。」
「舞台も人それぞれで。例えば、自分みたいにバングラデシュで活動する人もいるし、日本で企業に勤めてそこで、税金収めて、日本を支えるのも、本当に大きな舞台だし。起業家としてやっていくこともそうだし、サービスすることもそうだし。一人一人がその舞台でね。人ってそれぞれ生まれてきた環境や、生きてきた背景、価値観が違うし、それぞれのはずなんですよね。」
K.「その通りですね。」
「だから、いろんなすごい人たちもいるけど、あなたもスゴいんですよ。って思うんです。」
K.「言ってあげたいですよね。」
「みんながそう思えるようになったら、社会はほんとうに輝きを増すと思うんですよ。」
「もちろん、疲れることはありますよ。その疲れる中に、自分の存在価値を、やりがいをその舞台に持てるか。」
K.「僕思うんですけど、戦後ね60年くらいの間ね。日本人って褒められなかったんだと思うんですよ。」
「うん。」
K.「経済的に発展したらしたで、エコノミックアニマルと揶揄されて、結局、自分たちでも何が良いのかわからなくって。でも、外に出た人ほど、それがよくわかってきてね。『すごいな日本人』と。『一時って言ったら、五分前に来ちゃうんだね』みたいにね。(笑)」
「うん。」
K.「けどね、バングラデシュにくる前にインドのコルカタ空港を経由して来たんですけど、その空港内でね、多分日本の外交官か、政府関係のお偉いさんだと思うんですけど、
その人たちが、イミグレをスッと通り抜けていく姿をみたんです。他の人は長い列作って待ってるのにね。いわゆるVIP待遇ですよね。」
「うん。」
K.「けど、それ見てて思ったんですけど、あぁ別にこれはあの人達自身が偉いから、
あんな待遇されてるわけじゃないな。って」
「うん。」
K.「つまり彼らがイミグレを素通りできるのも、例えば僕みたいなもんが容易に世界中を旅出来るのも、結局は日本国に対する信頼でしょ。その信頼は僕ら個人に対してではなくて、それは、これまで、そして、いまこの瞬間も、日本で日常の仕事を当たり前に用に、ちゃんと頑張っているサラリーマンとか自営業のおっちゃん、おばちゃんたち、その人たちへの信頼ですよね。」
「そう!まさに、まさに。先人たちが、自分のおじいちゃんやおばあちゃん、親の世代が作り上げできた信頼。」
K.「そうです。」
「彼らがこういった国をつくってくれたからこそ、自分たちでも日本人っていうものを誇れるし。」
K.「そうなんです。だから、そのおかげで、あらゆる意味での優位性を僕たちはすでに与えられているんですよね。僕自身、この旅の中で初めて、そのことに気づいたので、日本で頑張っている人たちにそのことを伝えたいんですよね。みなさんが、頑張っているのが、世界で評価されているんだ!と。」
「うん。」
K.「だから、他の国の人たちに憧れられるためにじゃあ、海外に出ないといけないか?というとそうじゃないんですよね。いままで当たり前のように頑張ってきたことをいままで以上に楽しんで、やっていけばいいだな、と感じていますね。」
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◆最後に日本の高校生、大学生へのメッセージ
「やっぱり一番伝えたいことは、さっき言ったように自分の舞台を、心底認めて欲しいってことですね。あと、すごく思うのは、お金持ちの人、貧しい人、勉強出来る人、できない人、いろんな人がいるじゃないですか。」
K.「もちろん。」
「それを比べたりするじゃないですか。自分はできてる、できてないとか。でもちょっと待てよと。君たちね、もういまそこに存在している瞬間に宝くじ十回当たってるんだよ。
ものすごい確率の中であなた存在してるんだよ。もう、あなたね、一等賞だよ。それをね、実感して欲しい。もうね、その人生楽しもうよ。その人生を輝こうよ、生きようよ。思うままに。と思いますね。」
K.「なるほど」
「人生だから、いろんなことありますよ。けど、基本はあなた一等賞」
K.「すでにね。」
「うん、すでにね。バングラでね、ローカルバスに乗ってるときに思ったんですよ。あぁ、いまここでケンカしている彼、一タカ、ニタカでもめてる彼、寝てる彼、いろんな人たち見たときに、うわぁ、この人たちみんな一等賞なんだよな!って」
K.「ほぉ。」
「もう、あんたら一等賞だよ!みたいなことを言っちゃったんですよね。」
K.「(笑)」
「ほんとうにそれを思うんですよ。」
K.「ましてや、その中でも、日本っていう国に生まれていることを考えるとすごい事ですよね。あらゆるチャンスが存在する国ですよね日本は。高い教育も受けられるし、餓死する可能性もほとんどないし。そういう国に生まれて育って、大学まで行けちゃう。」
「そう。だけど、日本に生まれた事を卑下する人もいるじゃないですか。おれは日本という豊かな国に生まれちゃって、彼らはすごい貧しいのに俺だけこんな恵まれちゃってみたいにね。
それについて、妻が言っていたんですけど、『自分たちは日本っていう国に生まれた事を威張る必要もないし、卑下する必要もなくて、ちゃんと先人たちから受け継いだものを感謝して、ちゃんと大事に活かして、その生をまた繋げていくことが大事なことなんだよね』って。」
K.「奥さんスゴく立派ですね(笑)」
「彼女本当にねスゴいんですよ。大和撫子ですよ。すごく見た目は可愛い感じで、柔和な感じで、でも中にはしっかり芯が通っていて。」
K.「すごいなぁ」
「日本にいるそういう芯が通った女性たちのこともまた私たちは誇るべきですよね。」
K.「その通りだと思います。時間になりました。いやぁ面白かった!ありがとうございました。」
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◆インタビューを終えて
「長距離ランナー」
渡辺大樹さんという人がどんな人かと聞かれたら、いまの私はそう答えます。
バングラデシュ滞在中、エクマットラの活動だけでなく、
ご家族の結婚式にまで参加させていただきました。
様々な場面で、大樹さんの姿を見つめてみて、
いつでも、どんな場面でも
一生懸命で、全力を尽くしている姿に驚かされました。
まさに全力疾走です。
或るとき、そんな大樹さんの姿をみていて、
ドキドキしている自分に気づきました。変な意味じゃなくてね。
興奮してるんです。
なんかね、自然と声を出して応援したくなる。
この人のために自分に何かできないだろうか?って考えちゃうんです。
その感覚が、ずっと以前に、駅伝の大会を見にいったときの自分とリンクしました。
一生懸命に走っているランナーをそばで見ていると、
所属チームや順位なんか関係なく
「頑張れ!!」って応援したくなるものです。
そんな感じなんです。
大樹さんのそばにいると、そんな気持ちにさせられるんです。
途上国支援なんて言葉だけ聞いちゃうと、
スマートな戦略や、事業体のイメージを思い浮かべガチです。
たしかに、そういうやり方も生き方もある。
けどね、
あえて小細工を用いない、
あえて真っ直ぐに目の前の道を走っていく、
そんな人間の姿がこれほど輝くものなんだなと、
感動しました。
そして、特筆すべきは、
そんな大樹さんの全力疾走に魅せられたエクマットラのスタッフをはじめ周囲の人々が、応援するだけでなく、自らもまた、静かに自分の道を走り出しているということなのです。
エクマットラのスタッフ、インターン生、友人たち、大樹さんの周りにいる人々、それぞれが、それぞれの道をそれぞれのやり方で走り出しているんです。
その姿がまた輝いていてね。
人間が一生懸命に何かに取り組むことが、これほど素晴らしいことなのか、
と実感させられました。
大樹さん、
エクマットラのスタッフのみなさん、
そしてバングラデシュで出会ったみなさんに
心から感謝しています。
以上
(インタビュー実施:2011年12月)
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