ミャンマー二日目、私はヤンゴンに滞在していた。
午前中に駅近くのバスチケット売り場に行き、
翌日のバスチケットを予約した。
どこのバス会社も
陽気なスタッフばかりで、
私がチケットを購入した会社には
控えめな少年と、六ヶ国語が話せるお兄さん。
そして顔に誰かに殴られた後のあるおじさんがいた。
「お前は日本人か?」
「ミャンマーは良いところだろう?」
など次から次にお節介な感じで話かけてくるが、
悪い感じもなく、終始楽しく何事も無くバスチケットの予約は済んだ。
翌日そのチケットオフィスの前に再び集合し、
ピックアップをしてもらうことも確認し、
そのオフィスを離れた。
それから半日、
市内観光を済ませた私は、
一人で晩御飯を食べる食堂を探すために
街中をぶらついていた。
すると、
道端で突然
サングラスをかけた現地人っぽいおっさんから、
「ヘイ、ジャパニーズ!」
と声をかけられた。
「無視、無視」
と脇目も振らずに先に進んだが、
「俺だよ、おれ、昼間チケット買いに来たじゃないか!」
と言いだした。
振り返ると、
昼間チケットオフィスにいた顔に殴られた跡のあるおじさんだ。
「なんや、おっちゃんか」
「そうや、無視するなんてひどいやないか!」
とか、なんとか言いながら、挨拶をすませる。
「じゃ、オレ行くから」
と言うと
「どこに行くんだ?俺が連れってってやる」
ときた。
見たところ、おっちゃんは既に飲んだ後のようで、
アルコールのにおいもプンプンしていた。
「(めんどくせぇ事になりそうやな。)」
と感じた私は
「いや、でも友達と約束だから」
と断り文句を言ってみたが
「ノープロブレムだ。上手い中華の店があるんだ。
おれが案内してやるよ!」
と言って聞かず、
私を先導するようにおっちゃんが歩きだした。
「しょうがねぇな~」
と思いながらも、
まぁ悪い人ではなさそうだし、
付いていくことにした私。
しばらく歩くと、
市場の側で大勢に人々が、
お坊さんの説話を熱心に聴いている会場に遭遇した。
するとおっちゃんが、
「おい、お前、これ何をしているか知ってるか?」
「いや知らない。何やってんの?」
「いいか、ミャンマー人は熱心な仏教徒なんだ。
俺達はここで偉いお坊さんの話をきいて
将来の幸せを得るんだ。」
とかなんとか、熱心に語ってくれるおっちゃん。
は次の瞬間、
「そうだ!俺について来い!
あの偉いお坊さんの写真を撮らせてやる!」
「はっ?いいよ。時間無いし行くよ。」
「何を言ってるんだ。
これはミャンマーのことを知る絶好のチャンスなんだぞ!
写真だけじゃなく、ビデオも撮れるように準備しておけ!」
いや~やっぱり面倒くさいことになってきたな。
と思いながらも、おっちゃんの強引さと多少の興味も手伝って、
その説法会場に近づいた。
ざっと見たころ
500人以上が、
野外の会場にゴザを強いて
本当に熱心にお坊さんのお話に耳を傾けている。
その会場の囲いの外で
おっちゃんが
「こっちに来い!ここだここからお坊さんの写真がとれる!」
「こっちからはビデオを撮るんだ!
とかとにかく大きな声で私に指示を出す。
その声の大きさに会場内の人々が
ムッとした顔でこちらを睨む。
「わかった、言うとおりにするから
もう少し静かに喋ってくれ!」
おっちゃんに訴えながら、
言われるがままにビデオと写真を納めた。
これで終わりか。
と思ったが、さらに、おっちゃん
「そうだ!お前を会場の中に入れるように頼んでやる!」
「いや、マジでやめて、もう時間無いから。
友達まってるから!」
「いや、いいんだ同じ仏教徒じゃないか
きっと解ってもらえる」
「いや、解ってもらえなくていいから!!!」
と訴えるも、
おっちゃんは聞かず、
会場入り口に立っている
警備員や若いお坊さん達に
「こいつは日本から来た仏教徒なんだ。
お願いだから会場に入れてやってくれ!」
とか言って、
押し問答を始めた。
「(あぁ、頼むから断ってくれ警備員さん!!)」
そう思ってやりとりを見ていたが、
親切で熱心な仏教徒のミャンマー人警備員さんは
「わかった、ここからそっと入らせてあげるから
写真を撮ったら戻ってくるんだぞ」
と言いだした。
もう、なるようになれ。
そう開き直った私は
若いお坊さんに案内されるがまま、
会場の最前列に連れて行かれ、
そこから説法中の偉いお坊さんの写真を
パチリと撮らせて頂いた。
(だれなんだ、この坊さん!)
しかし、
それを済ませて
会場後方へ戻る最中、
ミャンマーの人々の熱心な表情をみるにつれて、
「本当に人の素敵な国だな」
と改めて、この国を訪れたことを嬉しく感じた。
そして会場入り口に戻ると、
おっちゃんもゴザに座ってお坊さんの話を聞いていた、
「ここに座りなさい、
いいか、ミャンマーの人々は争いを好まない。
みな幸せな将来のために、今日出来る事を大事にしてるんだ。
お金や家や財産の話じゃないぞ。
どんあ状況でもミャンマーの仏教徒は、
心の豊かな日々を送ろうとしているんだ。」
おっちゃんのその話を聞きながら、
「(面倒くさいなんて思っていたけど、
本当に良い経験ができたよ。有難うおっちゃん」
という想いがジワジワと沸いたところで、
私達は会場を後にした。
しばらく歩くと、
おっちゃんが
「じゃ、お前はあっち、おれはこっちだから
ここでサヨナラだ。」
「そうか、おっちゃん、
今日は何かとありがとうな。」
「いや、いいんだ。
それより聞いてくれ、俺の家はココから歩いて一時間の所にあるんだ。」
「うん。」
「だから、帰るのに少しお金が必要なんだが、
いくらかチップをくれないか?」
「ん?」
「いや、だから、いくらでもいいから、少し金をくれないか?」
「は?なんで?」
「いや、いろいろ案内してやったじゃないか?」
「、、、、、、!!、結局、カネかい!!!」
驚きのあまり、
エセ関西弁で何度も「なんでやねん!」と叫んでしまった私。
おっちゃんはしつこく
「少しでいいから。」
と訴えてくるので、
「そんな筋合い無いわ!」
と一喝して、そのまま背中を向けて
おっちゃんから離れた。
どんな敬虔な仏教徒も
カネが無いと生きていけない世の中
という話(?)
以上
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